竹千代くんのレッスン帖
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竹千代くんのレッスン帖

訪問レッスンを受けていただいているミックス犬の竹千代くん(と竹千代ママさん)にレッスンの様子をレポートしていただきます。10回の連載ですのでお楽しみに!

 
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第10回 トリック

みなさん、こんにちは!竹千代です。

お散歩の途中、お花屋さんの店先に赤いきれいなお花がいっぱい飾ってあったよ。ぽい・・ポインセチアっていうだっけ。サンタさんのお洋服と同じ色だね。いつもの商店街も、楽しい歌が流れていて、なんとなくうきうきしちゃうな。ジングルベ~ル♪

今日は「トリック」。基本のしつけ以外に、いろんな「一発芸」を習ったんだ。その話をするね。

最初に教わったのは「スピン」。おかあさんが「スピン」っていって右手の人差し指を回したら、くるっと回るんだ。逆もあるよ。これは、おかあさんの「手」をちゃんと見て、それにあわせて動くクセがついていれば簡単さ。

「バン!」「ちょうだい」「ごろん」とレパートリーが増えていって、「おじぎ」「8の字」「オーバー」(ジャンプ)「ハイタッチ」「竹千代くん、ハーイ」(片手をあげる)「ベル」(ベルを鳴らす)「真剣白刃どり」「輪くぐり」・・・あと、トリックじゃないのかもしれないけど、おもちゃをしまうとか、箱をあけるとか、靴下をもってくるとかもできるよ。正直いうと、体を動かす系はあんまりうまくないんだ。「ごろん」も、「え~い、よいしょっと~」って感じ(笑)。

苦手はあるけど、おかあさんと一緒に練習するのは楽しいよ。はじめは「何のことだろう?」とちんぷんかんぷん。それが、「できること」から少しずつやっていくと、ある日、急にわかる瞬間がくるんだ!おかあさんもいっぱい褒めてくれる。がんばったことを褒めてもらうと、うれしさも格別で、すごくいいことしたなぁ!っていう気になるんだ。

はじめて会う人と仲良くなれるのも、芸のおかげ。こういうの、芸は身をたすく、っていうんだよね。

トリックといえるかどうかわからないけど、ぼく毎朝、着替えているおとうさんに靴下を届けるのが仕事なの。おかあさんに「靴下、おとうさん」って靴下を渡されたら、片方ずつおとうさんのところにもっていくんだ。おとうさんに「竹千代、ありがとうね」と褒めてもらうと、えっへん、誇らしい気分になるんだよね。役に立ってるのかなぁ、って。


竹千代ママより

いまでこそこちらからリクエストしていろいろなトリックを教えていただいていますが、じつをいいますと、当初は「芸?そんなのべつに出来なくても・・」と思っていました。

それが、はじめてトリックを教えていただいたとき180度変わりました。「トリックはすごい!」トリックが、というより、「トリックを習う/覚えること」が、といったほうがいいかもしれません。

それはどういうことかといいますと——トリックは表面に見えないメリットがたくさんあるのです。

まず、「できないこと」を一緒にがんばって「できるようになる」、このプロセスは何ものにもかえがたい充実感、達成感を与えてくれます。わんこによって得手不得手は違います。きっと覚え方もスピードも違うでしょう。それを考えたうえで、どうしたらできるようになるだろう?こうしたらどうかな?と工夫しながら、少しずつ「理想形」に近づけていくのは、(はじめは骨が折れますが)それじたい楽しいことです。

ほんの少しでも「理想形」に近づいたとき、長いことわからなかったことがちょっとのきっかけでできるようになったとき、わんことの距離がまたぐっと縮まったことを実感されるでしょう。

その延長線上ですが、トリックを覚えると「褒める」ことが増えます。ちょっと進歩したら褒めて、また進歩したら褒めて。パピーのころは何もしなくても可愛くてチヤホヤされますが、成犬になるにつれてイマイチな面ばかり(宅急便の人に吠えるとか、畳をむしるとか)クローズアップされがち。でも、トリックを覚えることで、みんなに褒められる。飼い主さんにしてみれば可愛さ倍増、わんこの目もきっとイキイキしてくるはずです。

すると当然、飼い主さんの言葉に対するわんこの集中力も変わってきます。何か言葉をかけたとき、こちらの顔を見て「いまなんていったの?」「こうすればいいのかな?」と考えている・・・ような気がします。やっぱり頭も使えばよくなるんじゃないか・・・とこれも期待半分ですが(笑)。

トリックによって、飼い主さんに指示されて何か行動し、その仕事にたいしてごほうびをもらう、という習慣が身につくことも大きなメリットのひとつです。先生がおっしゃるように、これはまさにわんこにとって最も「自然」なことであり、飼い主さんとの関係にとってもじつは基本的なこと。現代のおうちわんこは「仕事がなくてごろごろ遊んでいる状態」ですから、トリックという「仕事」をして「報酬」を受け取る(褒められる、おやつをもらう)機会を設けることは、悪いことではない、と思います。

竹千代の場合、二つ三つトリックを覚えた段階で、「おかあさんの指示で何か行動する→褒めてもらえる」ことをのみこみました。そのあと新しいトリックを覚えるときも、こちらが教えようとするうちに「何をしたらいいのかな?これかな?あれかな?」と考え考え動いているようです。そのため、覚えるスピードが速くなり、本人(犬)も楽しめるようになりました。

また、「このトリックを覚えよう!」と決めて目標が設定されると、いやがおうにも、わんこと一対一で集中して向き合う時間が増えます。現実に、ひととおりしつけの基礎ができてしまうと、トレーニングがいいかげんになりやすいと思うのですが、そんな場合にもトリックは効果的です。

一般的な「しつけ」は、もともとルールを守らせましょうという性格のもの。「~~しないように」というパターンも多く、トレーニングでわくわくする気分を味わえるかというと、それほどでもないかもしれません。逆に、トリックは教えていて面白いです。トレーニングのメリハリもつきますから、その意味でもおススメです。

わんこお気に入りのトリックがわかってきたら、こんどはそれをごほうびに使うこともできます。つまり、「ごほうびとして、好きなトリックをさせてあげる」のです。トリックをして、飼い主さんが楽しそうにしているとわんこもテンションが上がりますよね。ですから、わんこにとって、好きなトリックをすることじたいがごほうびになります。(竹千代の場合は「スピン」と「モッテキテ」です。)

いくつか覚えていくうちに、自分のわんこが「できないこと」をできるようになるプロセスが見えてきます。どんなときにイヤになるか、どうしたらやる気を出せるかなども。感じ方、気分、体調、すべて含めてわんこのことをいっそうよく理解できるようになります。これからわんこと何をするにしても、きっと役に立つでしょう。

約1年間にわたりお世話になりました「竹千代レッスン帖」ですが、今回でいったんおしまいです。ご愛読くださいまして、ほんとうにありがとうございました。時々「役に立った」「参考にしています」などのお声をいただき、竹千代母子何よりもうれしく、励みになりました。

またお目にかかるときまで、皆さまも、わんちゃんもどうぞお元気で!

なお、来年春から、「続・レッスン帖」として再開させていただく予定です。その折はよろしくご支援のほどお願いいたします。

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(文と写真/竹千代ママ)

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